HPV(ヒトパピローマウイルス)は、ヒトの皮膚や粘膜に存在するごくありふれたウイルスであり、
現在100種類以上の型が知られています。
粘膜に存在するHPVのうち、発がん性の高い型は子宮頸がんなどを、
発がん性の低い型は尖圭コンジローマなどを引き起こします。
わが国では毎年約15,000人が子宮頸がんに罹患し、約3,500人の尊い命が奪われています。
たとえ死亡に至らないまでも、ごく初期のがんを除いては子宮摘出となる可能性が高く、
その場合は妊娠や出産ができなることはもちろん、排尿障害などの後遺症により日常生活に支障をきたすこともあります。
子宮頸がんは、若い女性から年齢の高い女性まで全ての年代の女性が罹る可能性があるがんですが、
20代〜30代で急増しているのが特徴です。
したがって、これから結婚や出産を迎える年代にとっては特に深刻です。
子宮頸がんは、発がん性の高いHPVの持続的な感染が原因となって発症します。
HPVの子宮頸部への感染はほとんどが性交渉によるもので、性交渉によって子宮頸部粘膜に微細な傷が生じ、
そこからウイルスが侵入して感染が起こると考えられています。
このウイルスに感染すること自体は決して特別なことではなく、性交経験がある女性であれば誰でも感染する可能性があります。
HPVに感染しても、ほとんどの場合感染は一過性で、ウイルスは自然に排除されます。
しかしウイルスが排除されずに長期間感染が続くと、
ごく一部のケースで数〜数十年間の前がん病変(がんになる前の異常な細胞)を経て子宮頸がんを発症します。
HPVの感染は非常に一般的ですが、子宮頸がん発症に至るのはごく稀です。
しかしHPVに感染した後にどのようなタイプの人が子宮頸がんを発症するかは分かっていないため、
子宮頸がんを発症する可能性は誰にでもあることになります。
HPVが子宮頸部に感染してから子宮頸がん発症までは数〜十数年間を要するため、
この間に子宮頸がん検診によって前がん病変を早期発見し、治療することが可能です。
また、原因であるHPVの感染を予防するワクチンがわが国で接種することが可能となりました。
ワクチンと検診で、子宮頸がんを予防することが可能です。
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